キューの種類や性能について

 

キューには色々な種類があって値段もピンきり。

ここではビリヤードのキューの種類や性能、その違いについて初心者から中級者を対象として説明してみたいと思います。

ここには書ききれない更に詳しい情報については、個別の特集ページで説明したいと思っていますので、そちらもお楽しみに。

 

キューの各部の名称

cue
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競技によって異なるキューを使用する
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ビリヤードには大きく分けて「ポケットビリヤード」「キャロムビリヤード」「スヌーカー」などの競技がありますが、それぞれの競技に合わせて作られたキューを選んで使用します。

 

1. ポケットビリヤード用のキュー

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ナインボールなどのポケットビリヤード競技をプレーするために作られているキュー。
ポケットビリヤードはアメリカで人気が高いため、アメリカのメーカーによって製造されたものが多く、他の競技用のキューと比較すると色彩が派手で象牙などの高級な素材が使用されているものが多いのがその特徴です。
シャフトの太さや形状は、ポケットビリヤード用のボールの大きさと、プレーに求められるショットの正確さに考慮して作られています。

 

2. キャロムビリヤード用のキュー

carom ポケットビリヤード用のキューとの一番の違いはシャフト。
どの種類のキューも共通してグリップのあるバットから球を撞く先端に向かって細くなる形状をしていますが、ポケットビリヤード用のキューのシャフトに比べて太めで先端にほぼ一定に細くなっている形状がその特徴です。
これはキャロムビリヤードで使用するボールがポケットビリヤード用のボールよりも大きく、重いことがその理由だと考えられます。
また、ポケットビリヤードよりもキャロムビリヤードの方が手球をより転がす必要があるショットが多い競技であるためだと言うこともできるでしょう。
ただし、グリップ側のバットの大きさや重さなどに大きな違いは無く、一本のキューにキャロム用とポケット用のシャフトを付け替えて併用しても問題はありません。

 

3. スヌーカー用のキュー

snookerスヌーカー用のキューの特徴は、ポケットビリヤード用のキューやキャロムビリヤード用のキューとその形状も重さも材質も違いがあります。
スヌーカーのキューは他の競技用のキューと比較して全体的に細く、ポケットビリヤードやキャロムビリヤード用のキューがメープルという素材で作られているのに対し、アッシュという素材で作られています。
そして、理想とされるスヌーカー用のキューはシャフトからバットまで継ぎ目(ジョイント)の無い一本の物と言われていて、今でもスヌーカーのトッププロの多くはジョイントの無いキューを好んで使用しています。
また、グリップ側の一番最後の部分が一部平らな形状をしているのもスヌーカー用のキューの特徴です。
これは昔、その平らな部分をビリヤードテーブルの縁に乗せ、片手で球を撞いていたため、そのような形状になっているそうです。

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ショットによって異なるキューを使用する
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ポケットビリヤードではブレイクショットやジャンプショットなどそれぞれのショットに適した専用キューが作られています。それらの専用キューの性能により、ショットの精度が向上するため、プロ選手からアマチュアまで広く使用されています。

1. ブレイクキュー
ブレイクショットに使用されるのがブレイクキューです。元々は、ハードなブレイクショットで先角やタップが壊れてしまうのを避けるために、プレーするキューではなく他のハウスキューを使用したり、安価なキューを使用していましたが、1990年代の初め頃から各キューメーカーがブレイクショットに適した性能のキューとしてブレイク専用キューを販売するようになりました。通常のキューよりも強く撞きやすく、ボールがテーブルの外へ飛び出しにくいように飛び跳ねにくい球質になりやすいように工夫されています。プレデターのBK2などがブレイクキューとして有名です。

2. ジャンプキュー
ポケットビリヤードでジャンプショットをするために使用するキューで、通常のキューよりも短くて軽く作られているのが特徴です。ジャンプキューも1990年代の初め頃から各キューメーカーが製造、販売するようになりました。

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価格やデザインでキューを選ぶ

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キューの価格はピンきり。安価なキューなら1本2万円くらいから買うことが出来ますが、高価なキューになると1本100万円を超えるものもあります。その価格が違う理由は素材やデザインなどさまざま。これだけ価格に差があるということは、それだけさまざまな種類のキューがあるということ。その中から自分の好みのキューを探すのもビリヤードの楽しみの一つと言われています。

1. プロダクションキュー
大手のキューメーカーが大量生産するキューのことで、プレーする上では十分な性能とさまざまなデザインが用意されています。価格帯は一部の高級モデルを除けば一本2万円から20万円くらいまでの間で販売されています。アダムジャパンやメッツなどがプロダクションキューメーカーとして有名です。

2. カスタムキュー
カスタムキューは(基本的に)職人が一本一本手作りしていて、オーダーメイドであったり、限られたデザインのキューをコツコツと生産しています。このようなキューをカスタムキューと言い、こういうキューメーカーをカスタムキューメーカーと呼びます。カスタムキューメーカーの多くは、職人一人か、ほんの数名でキューを製造しているため、年間数十本程度しか製造することが出来ないため、人気の高いメーカーにオーダーしても納品まで2年〜3年、またはそれ以上の年月を待たなければならないこともあります。カスタムキューの多くは繊細な細工がされていたり、象牙などの高級な素材が使用されていたり、独自のデザインや技術によって個性的なキューに仕上げられています。タッドやジナキューなどがカスタムキューメーカーとして有名です。

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キューの性能を左右するシャフト

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もともとシャフトは一本の木から作られたものしかなかったのですが、1990年代の半ばからハイテクシャフトと呼ばれる複数の木や素材を組み合わせて作られたものが登場しました。それ以降、プロやアマチュアの多くはハイテクシャフトを好む人が増え、各メーカーの開発競争も激しさを増しています。

1. ノーマルシャフト
キューを購入した時についているシャフトのことをノーマルシャフトと言います。メープルなどの素材で作られたもので、普通にプレーに使用する上で何も問題はありません。ただし、天然の木を使用しているため、しなり具合などはシャフトによってそれぞれ異なります。

2. ハイテクシャフト
ノーマルシャフトとは違い、複数の木材を貼りあわせたり、内部に木ではない素材を芯として入れたりして作られているのがハイテクシャフトです。そのため、ノーマルシャフトと比較して明らかにしなり具合などにばらつきがないのがその特徴です。また、ボールにひねりを与えるためにボールの中心よりも端を撞いた時に「飛び」と言われる現象が起こりにくく、ノーマルシャフトよりもショットの精度が高くなるので、ショットミスを軽減することができます。1990年代の半ば頃からキューメーカーが製造して販売するようになりました。プレデターの314シャフトやアダムジャパンのソリッドエイトなどが有名です。

3. 各種異なるテーパー
テーパーとは先端からバットとのジョイント部分までの形状のこと。厳密にはもう少し複雑ですが、簡単にその特徴をかいつまんで説明すると、ポケットビリヤード用のシャフトは先端からシャフトの3分の1くらいまで同じ太さで、そこから比較的に急激に太くなっていて、キャロムビリヤード用のシャフトはポケットビリヤード用のシャフトよりも一定の割合で徐々に太くなっています。このテーパーの形状はシャフトのしなり具合や、感触や球の走り具合やトビの大小、そしてシャフトそのものの重さにも影響するため、シャフトを装着するバットの性質や重さなどキュー全体のバランスにも関わりがあるため、一概にどういうテーパーが一番良いと言うことはできないと思います。キューメーカーの職人さんや、プロ選手は知識と長年の経験などから、自分に合うキューを見つける上で、シャフトの素材やテーパーなどを試行錯誤して気に入ったバランスのキューに仕上げているそうです。

4. 先角の材質と形状
シャフトの先に付いている先角。かつては象牙のものが多かったこともありますが、プラスティックなどで出来ているものが一番多いようです。初心者や中級者にはあまりその違いは実感出来ないかもしれませんが、シャフトのテーパーと同様にトビの大小などにも影響を与えるようで、先角も職人やプロ選手は知識と長年の経験などから、良いバランスのキューに仕上げる上で重要な要素だと捉えられています。

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5. タップの種類
タップはシャフトの先端に付いていて、ボールとキューが触れる唯一の部分。したがって、とっても小さくて薄いものですが、その性能はビリヤードやスヌーカーをプレーする上でとても重要です。その種類は「材質の違い」「構造の違い」「硬さの違い」とまとめることができます。材質は牛や豚などの革が用いられていて、ジャンプキューなどには合成樹脂で作られたタップが使用されていることもあります。構造は一枚の革を切り出した単層と言われるものと、複数枚の革を重ねて作られた積層と呼ばれるものがあり、1990年代以降は積層のタップが広く好まれているようです。硬さは単層でも積層でも複数の硬さのものが用意されていて、シャフトや競技やプレースタイルなどさまざまな要素で硬いものから柔らかいものまで幅広く使用されています。

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デザインや材質は性能を左右する

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大手プロダクションキューメーカーでは、大量生産に向いているシンプルなキューや、より高性能なキューを開発するために、さまざまな木材をさまざまな組み合わせでキューを製造しています。また、カスタムキューメーカーでは、他には無い個性的で性能の良いキューを作るための試行錯誤が続いています。

1. ストレートキュー
一本の木材を使用して作られているバットのキューのことで、一番シンプルな構造のキューです。中には表面に象牙や貝などを使用してインレイ加工により装飾をして個性的なデザインに仕上がっているものもありますが、構造が一本の木材から作られているものは全てストレートキューと言うことができます。

 

2. 剣ハギのキュー

バットのグリップからジョイント(先端方向)に向けて三角形の模様をハギと言います。これは複数の木材を組み合わせて作られているキューで、その素材に使用されている木やデザイン用に着色されたベニヤによって作られたものです。このハギにより見た目が個性的になるだけでなく、しなり具合や反発力などが異なるため、キューの性能も左右するものだと言うことができます。剣ハギのキューには、4剣や6剣や8剣など剣ハギの数が異なるものが色々とあります。

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3. たけのこハギのキュー

英語ではバタフライと呼ばれますが、その形状がタケノコのようだと言われ、たけのこハギと言われています。これも剣ハギと同様に複数の木材や着色したベニヤによって作られていて、キューの性能にも影響を与えています。

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4. さまざまな木材の種類
スヌーカーのキューはアッシュで作られているのが一般的ですが、ポケットビリヤードやキャロムビリヤードにはメープルが使われているのが一般的です。このポケットビリヤードやキャロムビリヤード用のキューの中には黒檀やココボロなどの木材を使用しているものも多く、この他にもさまざまな木材が使用されています。それらの木材はキューの見た目を大きく変えるだけでなく、キューの性能にも影響するため、さまざまな種類の木材を組み合わせたり、各キューメーカーは試行錯誤を重ねています。

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